薬づけをやめた東京都世田谷区の大平農園の生き物たちの記録である。戦後の食料増産に、指導的役割を担ってきた大平家だったが、先代は農薬禍で病死し、大平博四さん自身も失明寸前に。「昔の農業に戻ろう」という母親の一言で、土づくりに取り組む日々が始まる。「青虫が葉を喰う。鳥が虫を喰う。その糞を地面が吸い込む。それが野菜の栄養分になるのです」と語る大平さんにとって、虫も鳥も共に働く農業耕作者である。この作品は、ドキュメンタリスト亀井文夫の遺言でもある。