有機農業や自然環境などに関心をもち、取り組んでいる個人が集まり、運営委員会を構成して活動しています。非営利の市民グループで、全員ボランティアです。今回を含め延べ120作品を上映しています。そのうち45作品は日本初公開の作品で、そのほとんどを自前で字幕制作を行っています。
2006年、遺伝子組み換えを多面的に扱ったドキュメンタリー映画『食の未来』(原題〝Future of Food”)の日本語吹替版制作を担った人々が、有機農業をテーマとした映画祭の開催を呼びかけました。 この呼びかけに、有機農家、有機農業団体関係者、反農薬運動関係者、ジャーナリスト、編集者、学生などが集まり、開催に向けて運営委員会を作りました。
2007年11月に第1回映画祭を開催して以降、毎年秋に開催してきました。農作業が一段落した秋に開催することで、多くの農家や農業関係者に参加して欲しいという期待を込めて開催時期を「秋」としています。現在、上映会場の関係から、12月の開催となっています。暮れも押し迫る中ですが、毎年、楽しみにして下さる来場者、お手伝いで関わってくださった方々も増えています。有機農家や、有機農家で実習している若い人たちも参加しています。
国際有機農業映画祭の活動がきっかけとなり、国内でも各地で同様の映画祭が開催されるなど、上映活動の輪は大きく広がっています。また、上映作品も国内だけでなくアジア、アフリカ、中東、ヨーロッパ、南北アメリカにまで目を広げ、運営委員会で翻訳・字幕の制作を手掛けるなどの努力を積み重ねてきました。
2011年の東日本震災と福島原発事故のあった3・11後には、福島を舞台に原発を生みだした現代社会の矛盾を有機農業という営みをもとに考える自主製作映画『それでも種をまく』を制作し、英語、中国語、タイ語、ベトナム語、ドイツ語、フランス語、スウェーデン語版を制作し、ウェブで公開しました。2019年には、「それでも種をまくのその後」を制作し、現在、各地での上映も進んでいます。
3.11から10年を経た今、その後の様子は決して良い方向に行っているとは言えません。SDGsとして17項目について、地球規模での改善取組みが示されています。上映作品も、1国の問題に終わらず、世界がつながっていることを描いたものが多くなりました。一緒に考える機会の一つになる映画祭になっていると言えるのではないでしょうか。
国際有機農業映画祭が、単に有機農業や食の安全といった問題にとどまらず、自然と人との関係の在り方やそれを支える価値観、社会のつくり方といったところまで視野を広げ、”思想としての有機農業“を考える構成をめざす当初の形になり、動きにつながっていると感じます。
2021年の今、映画祭も15周年となり、もっともっとつながりを広げる「つなぐ・つなげる」ことで、問題解決を多様な形、多様な人のつながりで取り組みをする動きが大切になっていくと考えます。世界的なコロナ禍という状況で、オンラインの役割も重要になりました。世界と素敵なつながりを築き、誰もが住みやすく感じる世界になることを願います。
2021年と2022年は、続けて、コロナ禍による実会場での上映会は実施できず、これまでの1日中の映画祭を、初めて、オンラインのみの上映会として、取り組みました。今回、4月~3月を年度とする取り組みでは、2022年度となる2023年3月18日、第16回映画祭を、3年ぶりの実会場で実施することができます。オンライン上映により、これまで都内での開催のため、参加が叶わなかった遠方の方々もオンラインで参加くださり、とても身近な映画祭に感じたとの感想をいただきました。3月18日は、会場上映ですので、当日が予定のある方、遠方で、やはり参加できないという方々に、どういった対応ができるかも併せ、検討し続けたいと思っています。映像を通して、どのような暮らしの場にしていきたいか、多くの方が考え合う事、共通の理解を持つ機会を共有できる、そういった一つに映画祭をと願っています。