台湾北端にはミズホタルの飛び交う自然と棚田が残る。毎日のように、鍬をかついで棚田に通っている爺さんは88歳。少し腰が曲がってきたが、田植えの前には畦も塗る。畑でサツマイモやスイカも作っている。日本でも数少なくなった昔ながらの農村風景が、ここには残っている。
爺さんの手入れを怠らない棚田は、水生昆虫の世界でもある。タニシをたらふく食べたミズホタルの幼虫は、陸に上がり蛹になる。そして羽化した夏のひと夜、相手を求めて明滅する。台湾でも少なくなってきた水生昆虫の生態を縦糸に、棚田の自然とともにひょうひょうと生きる爺さんにほっとする。