美しい棚田のあるフィリピンでは古くから米が作られてきたが、その伝統や食が危機に直面しようとしている。米には含まれないカロテンを作り出す遺伝子組み換え(GM)の米、ゴールデンライスが商業栽培されようとしているからだ。
この遺伝子組み換えゴールデンライスは、文字通り黄金色の米となる。この米を食べれば、失明に至るビタミンA欠乏症が予防できるとの触れ込みで、フィリピンに本部を置く国際イネ研究所(IRRI)が中心となって、ゲイツ財団などの資金で開発が進められてきた。
GMゴールデンライスの商業栽培には、遺伝子汚染を心配する有機農民はもとより、保育関係者などが懸念を明らかにする。ムスリムのハラル認証団体の責任者は、遺伝子組み換え食品はムスリムが食べてはいけない食品だと断言する。元国際稲研究所の研究者ですら、緑黄色野菜を食べることで解決する問題であり、貧しい人びとはこの米も買わねばならないとして商業栽培に反対する。
国会議員は、病気の予防を表看板としたGMゴールデンライスの商業栽培を突破口に、遺伝子組み換え作物を大々的に栽培しようとするものだ、とこの動きを喝破する。GMゴールデンライスの金色は、希望の金色ではなく偽善のメッキにすぎない。