のっけからみんなバラバラ。自分のリズムでラジオ体操をしている人たち。冬の間、里に降りていたヤギとともに、1年を一緒に過ごす学生が上がってくる。春が里から上がってくる。車の通らない道を上がってくる。
「カン、カン、カン」板木が鳴る。この音で一日が回る。季節も巡る。田植えをして稲刈りをして……、ヤギが子を孕む。雪が降りはじめれば、百葉箱がかさ上げされる。そういえば、住人の出産や結婚式もあった。
長い人では35年も暮らしている一方、風に寄せられては散っていく人たち。ふらりと戻ってきた人がいる。受け入れるか否か話し合いは続く。「いいじゃない、仕事助かるし」の一言がみんなを救う。一瞬、時間を止めることの出来る人さえいる。
信州小谷村の片隅、大きな屋根のアラヤシキ(新屋敷)、共働学舎と呼ばれる空間に住む人びとの物語がはじまる。