東京・世田谷、住宅が立ち並ぶ一角に農地が現れる。400年続いている大平農園だ。
篤農家だったからこそ近代農業をいち早く取り入れ、先々代、先代(大平博四)とも農薬禍にあう。まだ有機農業という言葉のないころ、博四さんの義母の「江戸時代のやり方にすればいい」の一言で、農薬や化学肥料を一切使わない農業に切り替え、その技術を普及する努力もしてきた。
博四さんの妻の美和子さんが農園を引き継いでからも若いころ研修生だった波多野清さんを中心に、たくさんの人たちが畑にやってきて週2回の出荷を続けている。野菜をつくる人、食べる人、学ぶ人、学んだ人、集まってくる虫や草や鳥などすべての生きものが有機的につながっている空間。そんな1年を記録した。
大平博四さんについては亀井文夫、菊地周らによる『みんな生きなければならない』に詳しい(2009年、2014年に当映画祭で上映)。