たねは人類のはじまりから、わたしたちの命とともにあった。小さな一粒のたねは、食料だけでなく、衣服や工業製品など生活に必要なものの原料となる。そのため、宝として扱われていた。在来種のたねは、そのたねが育つ土地の文化の象徴であり、各地で大切に受け継がれるものでもあった。
しかし、その大切なたねに危機が迫っている。20世紀だけで野菜の94%の在来種が失われたという。“農業の近代化”という大義名分のもと、利益を重視した農業の工業化が進められ、在来種を育てる小規模農家がなくなりつつある。
大規模農場が増え、一代雑種(F1)や遺伝子組み換えのたねが育てられるようになった。たねが失われることによって、わたしたちの生活に影響はないのか。現代社会の問題を追及し、種と人との関係を見つめ直す。
『太陽の女王』『農民ジョン』の制作チームによる最新作。